味いちもんめ(26)

全国の競馬ファンが注目するビッグレース・日本ダービー。
その前夜、『藤村』に常連客の「社長」が桜肉を持って現われた。
明日のダービーに勝つために縁起を担いで、みんなで桜肉を食べようというのだ。
ところが、ボンさんだけが箸をつけようとしない。
実は、ボンさんには桜肉にまつわる悲しい思い出があったのだ。
『藤村』と同名の料亭が東京・四谷にできた。
店にとって同じ名をつけられるのも、あまり好ましい事ではないが、問題なのはこの店が本家『藤村』の評判を借りて商売に利用しているらしいということだった。
ある日、伊橋は書店で偽『藤村』が掲載されている記事を見付けた。
その説明には堂々と新宿『藤村』の姉妹店と紹介されていた。
今日も『藤村』に、常連の社長と円鶴師匠が来ていた。
しかし、ここ二ヶ月前からこの二人以上に『藤村』へ毎日のように通ってくる客がいた。
しかも、若い女性。
でも、特別酒が好きなようなようにも見えない。
その女性がなぜ『藤村』に通ってくるのか気になる伊橋。
どうやら、彼女は誰もいないマンションへ帰るのが寂しいようなのだ。
伊橋は、将来を嘱望される若手料理人の会「研鑽会」で冬瓜料理をつくることになった。
しかし本番前の予行演習で、大料亭の息子の立原らに仕組まれ、冬瓜料理に失敗してしまう。
腹を立てた伊橋は、なんとか本番では立原に勝とうと練習を重ねる。
伊橋の冬瓜料理を、料理界の大御所・小林正之助先生はどう批評するのか…。
暮れも押し迫り、忘年会シーズンで『藤村』も大忙し。
そんなある日、近くの高校の教師達が『藤村』を訪れた。
「生徒の学力だけを判断基準にせず、個性の尊重を大切にした教育をしよう」と熱弁をふるう教頭先生の言葉に感動する伊橋。
しかし、その教頭先生に杉板焼きスダチ添えを出すと、「焼魚にはカボスが一番だ」と文句を付け始めた。
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